ワークフローとは
簡単に言えば、ワークフローとは、体系化および事前定義されたさまざまな活動を図式化したもので、これによって望ましい結果が生み出されます。ワークフローには、ステップが順番に進行する基本的なものもあれば、連続したイベントの発生と並行して指定された依存関係、ルール、要件が絡み合う複雑なものもあります。理論上、同一ワークフローを実行すると必ず同じ結果になります。ワークフローを構成する要素は、ステップ、そのステップの実行に必要なリソース (スタッフや機械など)、それら要素間の相互関係です。ワークフローでは、開始点と終了点、進む方向、決定点となり得る場所、期待される結果、代わりになり得るステップが図式化されます。最後に、ステップごとの担当者を割り振ります。
ワークフローが実際に機能すれば、結果を最適化するプロセスがシンプルになります。無駄を省ける場所と、効率を向上させることができる場所の可視化が簡単になります。優れたワークフローによって、スタッフ間のコミュニケーションを改善し、成長の度合いを測定することができます。しかし、ワークフローを語るうえで忘れてはならないことがあります。それは、どのようにして成果にたどり着くのかということであって、仕事の進め方を規定した決め事ではないということです。
プロジェクト管理の分野でワークフローが重要なのは、それによって結果を予測したり、測定したりすることができるためです。プロジェクト マネージャーがワークフローを好む理由は、さまざまな要素に動きがあるたびに計画や調整が必要になる中で、ワークフローが期待通りの結果を出してくれるからです。
ワークフローの使用に伴う思いがけない 10 個のメリット
ワークフローによって時間が節約され、透明性と再現性が確保されます。しかし、それだけではありません。ワークフローをプロジェクト管理に取り入れると以下の 10 個のメリットがあります。
- ワークフローによってプロジェクトのリスクが軽減されます。プロジェクトがリスクにさらされると、プロジェクトの複雑さが増し、チーム メンバーの数が増える可能性があります。ワークフローによってスケジュールの遅れを確実に減らすことができます。作業をやり直さなくてはならない事態が限られるため、争いが起きる可能性やコストの削減にも寄与できます。
- 組織によい変化が起きます。チームが密に連携しながら作業をすると、経営陣がビジネス プロセス側に介入しなければならない事態が減り、ワークフローに対する理解も改善されるでしょう。
- ワークフローを導入すると、プロセスに変化が起きる可能性があります。ワークフロー作成の一環として、企業は現行プロセスを細部にわたって調査する必要があります。その結果、改善に結び付いたり、最適な状態になったりする可能性があります。
- ワークフローがあると、情報にアクセスしやすくなります。重要なプロセスをポイントごとに見直しすれば、ボトルネックや問題を確実に解消できます。このように全体を俯瞰できるため、プロジェクト マネージャーは、プロセスが最初から最後までどの程度首尾よく実行されているかを判断できます。
- ワークフローがあると各自の分担範囲が明確になります。タスクを完了させるのが誰の責任なのか、自分の担当業務はどこにあるのかについてスタッフがよくわかっていない状態にはなりません。ワークフローでそれが定義されているからです。
- プロジェクトのタイムラインの見積もりが改善されます。ワークフローはプロジェクト マネージャーが、タスクやプロジェクト全体の所要時間を見積もる際の土台となります。
- 可視性が向上します。ワークフローは、プロセスを関係者に視覚的に伝える方法です。
- マネージャーは戦略に専念することができます。システムがスムーズに動作していると、マネージャーは運用に対応するための時間を割く必要がなくなります。その代わりに、仕事の他の部分に注意を払い、ビジネスの成長と新規開拓を促進できます。
- ワークフローによって監査証跡が残ります。これは、ワークフロー管理ソフトウェア システムを使用する場合に特に当てはまります。タスクの進捗と完了、それに伴う詳細情報として、アクションをいつ誰が実行したのか、何か加えられた変更はあるかなどが記録として残ります。
- 企業がルールを設定できます。問題の発生時に人が判断を下すのではなく、ワークフローであらかじめ決められたルールに従います。これで、憶測に基づいて作業する必要がなくなり、時間を節約して、組織の作業能力に対する信頼を高めることができます。
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ワークフローを構成する主な要素
ワークフローのモデルは呼び方が多少異なることがありますが、以下に記載した構成要素はどの手法でも同じです。専門家によっては図を「インフォーマル」や「フォーマル」と呼ぶことがあります。インフォーマルなワークフローはシンプルで、特別なソフトウェアを必要とせず、図だけのこともあれば、一連のステップを線で結んだフローチャートの場合もあります。フォーマルなワークフローは、複数のソフトウェア システムで構成され、分析パイプラインと呼ばれることもあります。ワークフローのそれぞれの構成要素またはステップは、入力、変換、出力という 3 つのパラメーターで記述されることがあります。
- 入力: ステップの実行に必要な材料やリソース。
- 変換: 入力の受け取り方、処理内容を規定した具体的なルール。
- 出力: ステップによって生成され、次のステップの入力として機能する材料やリソース。
ワークフローの全体は、主な 4 つの要素からなっています。ワークフローのモデル化の際に、少なくともそれぞれがアクター、アクティビティ、結果、状態で構成されるようにします。
- アクターは、少なくとも作業の一部を担当する人または機械です。
- アクティビティは、実行されるタスクまたはビジネス プロセスで、プロセスにおける論理的な 1 つのステップに相当します。アクティビティが決まった形で実行されると、それはアクションと呼ばれます。アクティビティは、人または機械がアクティビティを完了してから次に移るのに適した構造になっています。アクターとアクティビティが組み合わさって 1 組になったときは、タスクと呼ばれます。依存関係の条件が満たされたときに、タスクはアクティブになります。
- 結果は、各ステップで想定される成果です。
- 状態は、プロジェクトがプロセスの間にあるときに発生します。フロー制御によって、プロセスの定義に基づき、それぞれの状態からあらかじめ決められた方向に向かってプロセスが確実に流れるようになります。
ワークフロー プロセスを文書化することは、プロジェクト マネージャー、専門家、研究者などにとって重要です。そうすることで、今後のロードマップになり、透明性と再現性が高まり、データのライフサイクルの中でデータを分析できるようになるからです。この分野の専門家は、データをどのように分析し、変換するのかを明確に把握することを勧めています。
ワークフローの歴史
ワークフローの歴史は、1920 年代の製造業と合理的な組織の研究にまで遡ります。Frederick Taylor や Henry Gantt のようなパイオニアがいますが、両者ともに機械エンジニアであり、黎明期の「プロジェクト マネージャー」とも言うべき人物で、特に製造の分野を中心に、どうすれば組織が作業を図式化し効率よく体系化できるのかを研究していました。Henry Gantt は後に、作業を追跡しやすくなるように、ポーランドで使われていた harmonogram (スケジュール表) を参考にガント チャートを作りました。ガント チャートは、ワークフローを視覚化したり、タイムラインを引いてマイルストーン、スケジュール、依存関係を落とし込んだりする際に役立つツールです。
製造業が発信源となって、「ワークフロー」とこの合理的な作業の整理方法がオフィスへと広まっていったのです。1950 年に出版された『Office Methods, Systems, & Procedures』(I.A. Herrman 著) によると、「ワークフローの図」を使用するとさまざまなタイプの問題を解決できる、とあります。1962 年には、離散事象システムの数理モデルに関する Carl Petri 氏の論文が発表されました。ペトリ ネット モデルはやがてワークフローのシステムやソフトウェアの設計に応用されるビジネス プロセスのロジックになりました。1990 年代に、ワークフローは何にでも応用できる初歩的な図から業界固有のソフトウェア システムへと進化して、プロセスの制御が向上しました。
ワークフロー改善のための理論
企業がプロセス改善に使用できる理論は多数あります。このような改善の理論は、目的に最もかなったワークフローを作成するために企業の実績、ニーズ、インプットを考慮に入れることを基本理念としています。
- シックス シグマ。この理論を簡単にまとめると、プロセスを細かい単位に分解することです。シックス シグマを使用すると、ワークフロー プロセスを標準化しやすくなるため、ばらつきを最小限に抑えるうえで役立ちます。
- リーン システム。リーンは、常に改善を追求し、少ない労力でできることを増やすことを追求するため、プロセスのワークフローが改善するように作用します。
- 総合的品質管理。このシステムは、プロセスを微調整するための各ステップで品質に磨きをかけます。
- ビジネス プロセス リエンジニアリング (BPR)。これは、ワークフロー管理ソフトウェアを使用して、ビジネス プロセス リエンジニアリング (BPR) をサポートするという方法論です。
- 制約の理論。この理論は、特に製造業におけるワークフローのボトルネックの管理と、ボトルネック修正の評価に焦点を当てた理論です。
各種業界のワークフローの例
ワークフローは、それを使用する業界や人と同様にさまざまです。各種業界でワークフローがどのように使用されるかについて簡単な例を以下に示します。
- 人事: 新規採用のプロセス、休暇の処理方法、年間トレーニング要件、給与プロセスをワークフローで規定できます。
- 医薬品製造: 原材料試験、医薬品の製造、製品の包装、製造後試験、出荷準備などの分野における品質管理にワークフローを使用します。
- カスタマー サービス: ワークフローによって顧客からのクレーム調査が割り振られます。
- 軍事: ワークフローを展開して敵対的な状況を管理し、関与のルールに従います。
- 旅行: 旅行会社で、顧客のフライト、ホテル、ツアー、レンタカーの予約を管理するためのワークフローを使用します。
- 医療: 患者が医師から処方箋を受け取り、調剤を経て、最終的に薬を受け取るまでのプロセスをワークフローで管理します。
- IT: スタッフから応援を求められたソフトウェア/ハードウェアの問題に対してタイプごとにどう対処するかを、ワークフローを使用して規定します。
ワークフロー管理と BPM ソフトウェア
ビジネス プロセス管理 (BPM) ソフトウェアは、ワークフローを複数の各種アプリケーション、システム、テクノロジー、人といった要素とつなぎ合わせます。BPM は複数のワークフローとプロセスに相当し、総合的なビジネス プロセス改善サイクルをサポートします。
ワークフロー管理とプロジェクト管理の違い
ワークフロー管理とプロジェクト管理はコンセプトが似ており、互いに関係はありますが同じものではありません。ワークフロー管理はビジネス プロセスの自動化です。自動化の対象となるビジネス プロセスは定義されていて、通常は同じ状態 (または類似の状態) が継続し、発生頻度が高いものです。ワークフロー管理は、変化がいつも小さい反復的なプロセスに適用することができます。一方、プロジェクト管理は、調整や計画のより大きなプロセスで、常に状態が変化し、指定された個別プロジェクトの変化に対応する必要があります。組織の目標を達成し、プロジェクトを完了させるために多くのツール、リソース、プロセスが使用されることがあります。
ワークフロー管理システムについて
ワークフロー管理システム (WfMS) はソフトウェア システムで、ワークフローという名のビジネス プロセスを編集、追跡、制御、調整するインフラストラクチャが備わっています。WfMS を使用すると、ユーザーがさまざまな状況 (仕事、プロセス、設定) に応じて必要なワークフローを定義できます。また、多くの WfMS は、プロセスの分析と測定を行う機能を備えているため、改善、合理化する余地を探し出し、それを実施できます。
多くの WfMS は、ルーティングや処理を自動化したり、複数の (それ以外の) 個別システムとプロセスを組み合わせて統合的な構造にしたりすることができます。また、既存のインフラストラクチャと統合させたり、ソースが異なるさまざまな製品を整理したりすることもできます。その他にも、WfMS を使用して、通知を行ったり、ステップを実行するうえで必要なデータを次の担当者に引き継いだり、未完了のタスクをフォローアップしたりすることもできます。このような機能によって、ワークフロー システムの付加価値が高まります。
3 タイプのワークフローはワークフロー管理システムで構築できますが、どのタイプを使用するかは、プロジェクトのニーズに応じて変わります。3 タイプのワークフローとは、シーケンシャル ワークフロー、ステート マシン ワークフロー、ルールに基づくワークフローのことです。
- シーケンシャル ワークフローは、フロー チャートと同様に、直線的に前に進んでいくタイプです。このワークフローはタスクまたはプロセスを次から次へと進めていき、逆戻りすることはありません。
- ステート マシン ワークフローは、シーケンシャル ワークフローよりも複雑で、依存関係で要求されれば逆戻りすることもあります。このタイプのワークフローは、ある「状態」から別の「状態」へと移ります。
- ルールに基づくワークフローは、実質的に高レベルなシーケンシャル ワークフローです。 「ルール」に基づいてワークフローの進み方が決まります。関数が「true」か「false」であるかどうかで決まるという条件が使用されており、ルールが「if」「then」「else」の関数でモデル化されます。
ワークフロー管理ソフトウェアのメリットと特徴
ワークフロー ソフトウェアまたはワークフロー エンジンで、毎回結果が同じ (もしくはほぼ同じ) ことがわかっている反復的なビジネス プロセスを自動化することができます。企業やプロジェクト マネージャーは、仕事をこなすうえで柔軟性があり責任範囲を明確にしてくれる包括的な統合ソフトウェア ソリューションを必要としています。
最適なワークフロー管理システムとは、ビジネス ニーズを満たすシステムです。一部の企業は「軽量」なシステムを提供していますが、それは、プログラムがシンプルで高速であり、市場に出ている他の製品よりもコンポーネントが少ないということです。テクノロジーの専門家の中には、「軽量」なシステムの方が使いやすく、メモリの使用が少ない場合があると言う人もいます。ワークフロー管理システムの中には、ごく小さいものですが、さらに大きいシステム全体の一部となっているものもあります。どのシステムを選択するにしても、ユーザーはワークフローすべてを管理できる 1 つのプラットフォームを持つ必要があるというのが、ほとんどのテクノロジー専門家の意見です。
以下のリストでは、現在利用可能なソフトウェアに見られる特徴の概要がまとめられています。テクノロジーの専門家は、ビジネス プロセスにとって重要な機能はどれなのかを判断して、それぞれのソフトウェアで利用可能な機能に基づいて選択することを勧めています。
- 自動処理機能
- 適応性と柔軟性 (ケース バイ ケースでワークフローを変更できるか)
- 無制限の依存関係の提供
- ステップと分岐の並列実行が可能
- クラウドベース
- グリッドベース (ローカルのみ)
- カンバン ボード
- ワークフローをさまざまな方法で視覚化できる
- 現行インフラストラクチャの活用
- Microsoft Office 製品との統合
- SAP などのサービスとの統合
- Java/UNIX/Oracle との統合
- 直感的な習得/使用が可能
- モデリング
- 測定 - ダッシュボードのメトリック
- KPI ベース - 分析レポートの出力
- スタッフへの通知とアラート
- ロール ベースのアクセスと制御
- 監査証跡
- コストとコスト スケジュール
- オープンソース (オプション)
- CRM
- 時間記録とタイムシート
- リソース管理
- 収益性の追跡
- クライアント ポータル
- 請求書と伝票の作成
- SaaS ベース
- 予算のフォームと追跡
- 文書管理ソフトウェアとの互換性
- ガント チャート
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