オペレーショナル エクセレンス: 主要な原則と実装方法

By Kate Eby | 2019年10月11日

この記事では、オペレーショナル エクセレンスの主要な原則と失敗を回避する方法を、著名な実践者や Institute for Operational Excellence (オペレーショナル エクセレンス協会) から学びます。例やヒントもご紹介します。

このページには、詳細なフェーズごとの実施計画、オペレーショナル エクセレンスの KPI、オペレーショナル エクセレンスのケーススタディなどが記載されています。

オペレーショナル エクセレンスとは何か

オペレーショナル エクセレンスとは、企業が成長に集中し、競合他社よりも優れた戦略を実行するためのフレームワークです。 

組織のエクセレンスに向けた最初のステップは、組織のシステムがスムーズに機能しているかどうかをすべての従業員に明確に示し、チーム メンバーが必要に応じて改善に参加できるようにするための、効率的なプロセスを構築することです。 

これらのプロセスはバリュー ストリームとも呼ばれ、自動車のような有形の製品、あるいはサービスのような無形の製品を生み出します。継続的改善やその他のツールを活用して、オペレーショナル エクセレンスを追求している企業は、問題解決、チームワーク、トップラインの成長といったマインドセットを採用することで、顧客のためにより多くの価値を創出しています。  

イノベーションと成長を追求する能力 (エグゼキューション エクセレンスとも呼ばれる) を得るために改善を続ける原動力となるのが、業務の体系的な管理と、顧客のニーズとスタッフの支援に焦点を当てたポジティブな文化へのコミットメント、という 2 つの主要な柱です。権限を与えられたスタッフは、目標と計画を明確に理解し、自信を持って取り組みを主導し、問題を解決する方法を考え出すことができます。 

「オペレーショナル エクセレンスにより、組織は従業員の業務意欲の向上と合理化されたプロセスを通じて、同じスタッフでより多くのことを行えるようになります。オペレーショナル エクセレンスとは、リソースを削減するのではなく、よりよく活用する方法を一緒に考えることです。」と、組織パフォーマンス コンサルティング会社 Collectiver Inc. (コレクティバー) の社長であるセルゲイ・ブロフキン (Sergei Brovkin) 氏は言います。 

オペレーショナル エクセレンスを実践するには、このコンセプトを独立したイニシアチブやイベントではなく、すべての活動に浸透する文化として捉える必要があります。

オペレーショナル エクセレンスを実現している企業は、製品やサービスを顧客が望むタイミングで、最小のコスト、最小の労力で、顧客が望む価格で提供することを目標に事業を運営しています。  

このコンセプトは多くの定義を生み出してきたため、多くの人がオペレーショナル エクセレンスを理解するのに苦労しています。これらの定義の中には、「最高であること」や「世界クラスの」パフォーマンスの達成、といった曖昧で実践するのが難しいものもあります。

オペレーショナル エクセレンスの実用的な定義として、一流の専門家らは継続的な改善手法における主要なコンセプトを推奨しています。

オペレーショナル エクセレンスは価値に重点を置く

リーンシックス シグマなどの関連する理論と同様に、オペレーショナル エクセレンスも価値の概念に焦点を当てています。これらの理論では、顧客の視点から価値を定義します。価値とは本質的に、顧客が本当に望み、対価を支払ってもよいと考えるものを表します。   

バリュー ストリームとは、顧客が求める製品やサービスを構築するためのプロセスです。オペレーショナル エクセレンスにおける体系的な改善は、効率的なバリュー ストリーム、つまり顧客が求める速度で流れるバリュー ストリームの作成を目的とします。 

オペレーショナル エクセレンスのスペシャリストは、バリュー ストリームのタイミングを視覚的に確認できるようにします。製造工場の場合、組み立てラインは即座に見ることができるバリュー ストリームです。生産速度が適切であれば、すべての工程がスムーズに進んでいることがわかります。言い換えれば、生産速度が理想的な場合には、ボトルネックがなく、半加工製品の滞留もなく、作業者が前工程からの資材の到着を待つ時間も発生していません。

ソフトウェアやコンサルティングなど、無形の製品やサービスを生産する場合でも、フロー速度を視覚的に示すシグナルを作成することで、バリュー ストリームを可視化できます。これを実現する方法については、この記事の後半で説明します。現時点で押さえておくべき重要なポイントは、バリュー ストリームを可視化することで、組織のすべてのメンバーが、物事が適切に機能しているかを確認したり、問題を解決するために行動したりできるようになるということです。 

この考え方は、オペレーショナル エクセレンスの理念にとって非常に重要であるため、Institute for Operational Excellence (オペレーショナル エクセレンス協会) は、オペレーショナル エクセレンスを「従業員一人一人が顧客への価値の流れを見て、問題が生じる前にフローを修正できる状態」と定義しています。

言うまでもありませんが、オペレーショナル エクセレンスの焦点は運用 (オペレーション) であることを忘れないでください。このアプローチでは、どの製品を提供するか、どのように流通させるか、どの地理的市場に参入するかなどの戦略は扱いません。これらの戦略的な判断は上級管理職の領域であり、オペレーショナル エクセレンスが実現されている場合、上級管理職は日々の運用に関与することなく、収益の増加に集中できます。 

専門家の中には、オペレーショナル エクセレンスを目的地ではなく旅になぞらえる人もいます。私たちは常に少しずつ前進できるため、エクセレンスの定義は現状に対する相対的なものとなり、時間の経過とともに変化します。 

ただし、この改善はそれ自体が目的ではないことも忘れてはなりません。Institute for Operational Excellence (オペレーショナル エクセレンス協会) の創設者であるケビン・ダガン (Kevin Duggan) 氏は、「工場がいくら効率的であっても、顧客が製品を必要としていなければ意味がない」と指摘します。オペレーショナル エクセレンスの目的は、顧客が求める製品を確実に生産して提供し、ビジネスが成長し続けられるようにすることです。

「オペレーショナル エクセレンスとは、収益の効率や生産性だけを指すのではありません。重要なのはビジネスのトップラインの成長です。経営陣の介入が不要なシームレスなフローとは、経営陣が市場に集中できることを意味します。」とダガン氏は言います。

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オペレーショナル エクセレンスの原則とは

前述のとおり、オペレーショナル エクセレンスの定義は数多く存在するため、このコンセプトの主な原則を把握しようとする試みが数多く行われてきたことは驚くにあたりません。この記事では、これらの原則についての説明のうち、最も影響力を持ち、広く採用されている 3 つの説明に焦点を当てます。

Institute for Operational Excellence (オペレーショナル エクセレンス協会)

以下は、ダガン氏によるオペレーショナル エクセレンスのコンセプトです。これら 8 つの教訓は、先ほど説明した価値、フロー、作業の可視性と密接に関連しています。

  1. リーン バリュー ストリームを設計する: カイゼン イベントやブレインストーミングではなく、エンドツーエンドのフローを実現するための原則に基づいて、将来的なバリュー ストリームの状態を設計します。 
  2. リーン バリュー ストリームを実装する: カスタマイズされた正式なトレーニングと教育を通じて設計を実現に導き、次にターゲット領域に実装します。 
  3. フローを可視化する: 個々の従業員が原材料から顧客までのフローを視覚的に確認できるビジュアルを確立します。 
  4. フローの標準作業を作成する: バリュー ストリーム全体の正常なフローを定義するために、プロセス間のフローの標準作業を確立します。 
  5. 異常なフローを可視化する: 色分けなどのさまざまな工夫により、従業員一人一人がフローが異常になったことを一目で把握できるようにします。 
  6. 異常フローのための標準作業を作成する: 従業員と協力して、異常なフローに対応するための選択メニューを作成します。これにより上層部の介入が不要になります。 
  7. フローに関係する従業員にフローを改善させる: 顧客の需要に合わせてフローのパフォーマンスを継続的に改善し、異常なフローの防止に積極的に取り組みます。 
  8. 攻めの活動を推進する: 経営陣はビジネスを成長させる「攻め」の活動、すなわち顧客に対するソリューションやテクノロジーのプロバイダーになる、将来の革新的な製品を顧客とともに開発する、といった活動に注力します。

新郷指針

もう 1 つの権威ある一連の原則は、「新郷指針 (Shingo Guiding Principles)」あるいは「新郷モデル (Shingo Model)」と呼ばれるもので、製造設計やトヨタ生産方式の立役者であった、日本の工業技術者の故新郷重夫氏の業績に由来します。

新郷氏の思想と 18 冊の著書は欧米で大きな影響を与え、1988 年にはユタ州立大学ジョン・ M ・ハンツマン・スクール・オブ・ビジネスが、新郷原則の実践に秀でている企業を表彰するために、Shingo Prize for Operational Excellence (新郷オペレーショナル エクセレンス賞) を創設しました。過去には、保険会社、軍事部門、製薬会社、消費者製品メーカーなどが受賞しています。 

新郷指針は、ピラミッド状に積み重なった 4 つの領域にグループ化されています。

  • 最下部にあるのは文化的なイネーブラーです。 
    • すべての個人を尊重する。
    • 謙虚な姿勢で導く。
  • 次の層は継続的改善の推進要因です。
    • 完璧を求める。
    • 源流で品質を保証する: 最初から正しく作業し、ミスが発生した場合は修正します。
    • 価値のフローとプル: 顧客の真の需要に対応した途切れない継続的な生産フローを作成することで、顧客価値を最大化します。 
    • 科学的思考を受け入れる: 実験と学習に基づく規律正しいプロセスに従って問題を解決し、失敗を恐れずに新しいアイデアを検討するよう従業員に奨励します。 
    • プロセスに焦点を当てる: 多くの組織は失敗を個人のせいにしています。しかしながら一貫して優れた結果を出すためには、強力なプロセスが必要です。  
  • ピラミッドの頂点に向けた次の層は、組織全体の整合性を生み出す要因です。
    • 体系的に考える: サイロ化を打破し、組織全体について考えます。プロセスと人々が相互に関連していることを認識し、障壁を打破するように努めます。
    • 目的に一貫性を持たせる: 使命、戦略、計画を完全に明確にし、日々の活動をより大きな目的と目標に結び付けます。 
  • ピラミッドの頂点に位置するのは結果です。
    • 顧客のために価値を創出する: これが企業の存在意義であり、顧客が何を必要とし、何を期待しているのかを知る努力を常にしなければなりません。

実践者が提供するその他のオペレーショナル エクセレンスの原則

オペレーショナル エクセレンスの原則は、その他にも多くの実践者によって、さまざまに定式化されています。独立系コンサルタントで BPMInstitute.org (ビーピーエムインスティテュート) の教員でもあるマーヴィン・ヴルツェル (Marvin Wurtzel) 氏は、オペレーショナル エクセレンスは次の 7 つの基準のパフォーマンスによって決まると述べています。

  1. 戦略: リーダーがビジョンと価値を生み出し、戦略的な焦点と方向性へと落とし込んでいる。
  2. 指標: バランス スコアカードと戦略的プランニング ツールが組織内でカスケード ダウンされている。
  3. 文化: スタッフ メンバーが戦略を理解し、結果に責任を負っている。
  4. プロセス: 組織には統合されたビジネス プロセス アーキテクチャがある。
  5. 方法論: リーン シックス シグマ (LSS) などの手法を通じて、継続的改善のための原則を厳格に適用している。
  6. プロジェクト管理:プロジェクト管理知識体系 (PMBOK)」に従って、プロジェクトに原則を厳格に適用している。
  7. ツール: ソリューション デリバリー、問題解決、継続的なプロセス改善のためのツールを採用している。

オペレーショナル エクセレンスの取り組みが失敗する理由

オペレーショナル エクセレンス イニシアチブは非常に人気がありますが、McKinsey & Company (マッキンゼー・アンド・カンパニー) の調査によると、オペレーショナル エクセレンスのような組織改革の 70% 以上が失敗していることが判明しています。その一般的な原因が、不完全なリーダーシップとコミュニケーションの不足です。 

McKinsey (マッキンゼー) によると、効果的なコミュニケーション、積極的なリーダーシップ、権限を与えられたスタッフ、継続的改善を促す環境など、「厳格なアクション指向のアプローチ」を採用することで、このような状況を克服できます。同社は、成功を促進する 24 の実用的なアクションを特定しています。これらのアクションを実行している企業では、オペレーショナル エクセレンス プログラムが 79% の確率で成功しています。 

専門家によると、失敗の原因は通常、リーダーシップ、マインドセット、実行のいずれかに分類されます。

リーダーシップに関係するオペレーショナル エクセレンス プログラムの失敗の理由としては、上級管理職がオペレーショナル エクセレンスに関する理解や専門知識を欠き、間違った理由で取り組みに着手している、リーダーシップが不明確または一貫性がない、リーダーがスタッフに求める変更をモデル化していない、上級管理職が短期的な結果に重点を置きすぎている、顧客の重要性を認識できていない、などが挙げられます。

適切なマインドセットが整っていないことも、オペレーショナル エクセレンスが失敗する理由となります。この取り組みを一度きりのイニシアチブと考えず、企業文化として定着させることが必要です。変化に対する従業員の抵抗も、オペレーショナル エクセレンス プログラムの失敗につながります。

実行に関連する失敗の理由としては、ボトムアップのフィードバックなしにトップダウンで取り組みを進める、短期間に多くの変更を加えすぎる、改善の取り組みがサイロ化されており組織全体が恩恵を得られない、役割と戦略の整合性が取れていない、コミュニケーションが不十分、説明責任が欠如している、結果を測定できていない、などが挙げられます。 

Institute for Operational Excellence (オペレーショナル エクセレンス協会) のダガン (Duggan) 氏は、失敗の原因として、オペレーショナル エクセレンスが何を意味するのかについての理解不足を挙げています。このような場合、リーダーがリーン方式による無駄の排除、あるいは継続的な改善という理念にとらわれすぎていることがあります。その代わりにダガン氏は、価値をシームレスに提供するという目標を描き、達成することを奨励しています。「リーン方式と継続的な改善は非常に素晴らしいものです。しかしながら、ポイント A からポイント B への移行を促す最大の要因は、ポイント B が何であるかを知っていることです。」と同氏は説明します。

オペレーショナル エクセレンスのメリットとは

オペレーショナル エクセレンスは、確かな結果をもたらします。オペレーショナル エクセレンスを達成した企業は、そうでない競合他社よりも、コストを削減し、収益を上げ、リスクを減らし、顧客満足度を高めることができます。 

オペレーショナル エクセレンスのメリットとして一般的に挙げられるものを以下に示します。

  • プロセスおよびリソースの有効活用
  • コストの削減または抑制
  • 従業員の士気高揚と安定化
  • 一貫性のある管理
  • 株主価値の向上
  • 高い品質基準
  • サプライヤーとの有益なパートナーシップ

オペレーショナル エクセレンスが重要な理由

オペレーショナル エクセレンスが重要なのは、大きな競争上の優位性となるためです。比較的小規模なプロセス改善も大きな影響を与えます。Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 誌の調査により、オペレーショナル エクセレンスがピークに達している企業は、取り組みが遅れている企業に比べて、成長率が 25%、生産性が 75% 高いことがわかっています。

マイケル・トレイシー (Michael Treacy) 氏とフレッド・ウィアセーマ (Fred Wiersema) 氏は著書『The Discipline of Market Leaders (邦題: ナンバーワン企業の法則 - カスタマー・インティマシーで強くなる) 』の中で、オペレーショナル エクセレンスは組織の競争基盤として機能する 3 つのバリュー プロポジションの 1 つであると述べています。(他の 2 つのバリュー プロポジションは、製品リーダーシップとカスタマー インティマシーです。)

では、その秘訣は何でしょうか。オペレーショナル エクセレンスは、組織の主要な特性や行動に影響を与える手法であるため、好況時にも不況時にも成功するのに役立ちます。

  • アジャイル: オペレーショナル エクセレンスは継続的な適応を重視しているため、動的で柔軟性に優れています。組織は、市場や顧客の好みの変化、革新者による新しいテクノロジーの導入などに伴う問題に対応する必要があります。オペレーショナル エクセレンスの原則を適用すると、顧客のニーズを満たし、ビジネスを成長させ続けるための自己修正メカニズムが自然に構築されます。
  • 戦略的: オペレーショナル エクセレンスを実践すると、企業のリーダーが低レベルの問題解決や日々の業務管理に関与する必要がなくなります。その代わりに経営陣は新たな製品や市場、収益機会の開拓に取り組めます。すなわちリーダーは、発生した問題への対処ではなく、より大きな視点に立って、脅威を退け、ビジネスの成長を維持することに専念できます。 
  • 効率的: バリュー ストリームを重視することで、無駄を省いた効率的な運用が達成されます。これにより、最適な価格で顧客に価値を提供し、品質を高く保つことができます。効率化は収益性の向上にもつながります。
  • 従業員: 問題を解決するための権限を従業員に与えることで、強力な組織文化が生み出され、スタッフの獲得と定着に役立ちます。このような環境では、従業員が新しいアイデアを考え、経営陣に積極的に提案するようになります。こうした改善は、新しい機会、コスト削減、需要の増加につながる可能性があります。 
  • 成長: オペレーショナル エクセレンスは、標準化されたプロセスを使用し、それらのプロセスを継続的に改善することに依存しています。これらの原則に従うことで、新しい場所やチームへの適用が容易な、ビジネスを運営するためのテンプレートが提供されて、成長が促進されます。業務のあらゆる側面を最適化し、ベスト プラクティスを体系化すると、新しいスタッフのトレーニングも容易になります。

オペレーショナル エクセレンスのルーツ

現代のビジネスが誕生して以来、リーダーやマネージャーは仕事の方法の改善に努めてきました。アプローチとしてのオペレーショナル エクセレンスは、さまざまな経営者の理論や思想家に多くを負っています。

この中には、いわゆる科学的管理の創始者も含まれており、18 世紀に『国富論』を著し、分業に関するアイデアを紹介したアダム・スミス (Adam Smith)、19 世紀に科学的管理の主唱者としてワークフローによる効率化を目指したフレデリック・ウィンズロー・テイラー (Frederick Winslow Taylor)、組み立てラインの開発で主導的な役割を果たした Ford Motor Co., (フォード・モーター社) の創設者であるヘンリー・フォード (Henry Ford) などが挙げられます。 

また、リーン手法、トヨタ生産システム、ジャスト イン タイム (JIT)、トヨタ ウェイなど、日本の産業革命もオペレーショナル エクセレンスの形成に貢献しました。トヨタ手法の開発には、トヨタのエンジニアであった大野耐一氏をはじめとする多くの人が尽力しました。

シックス シグマ、根本原因分析プロセスである DMAIC や 5 Whys、Hoshin Kanri (方針管理)カンバンビジネス プロセス マッピング、リーン シックス シグマの DMADV およびその他のツールなどのビジネス プロセス改善手法や、データ主導の意思決定のアイデアは、いずれもオペレーショナル エクセレンスに多大な影響を与えています。

オペレーショナル エクセレンス モデル

「オペレーショナル エクセレンス モデル」は、プロセスの実行を改善するためのフレームワークです。オペレーショナル エクセレンス モデルには通常、展開の実行、パフォーマンスの管理、プロセスの改善、文化の向上などが含まれます。 

「オペレーショナル エクセレンスは、4 つの主要なカテゴリで構成されています。すなわち、戦略の展開、パフォーマンスの管理、高性能の作業チーム、プロセス エクセレンスです。」と、トレーニング会社 Global Six Sigma (グローバル シックス シグマ) の CEO で、International Society of Six Sigma Professionals (国際シックス シグマ プロフェッショナル協会) の会長を務めるピーター・ピーターカ (Peter Peterka) 氏は指摘します。

オペレーショナル エクセレンス モードでは、4 つの主要なカテゴリの下に、ビジョンやリスク管理などの目標を達成するためのツールと方法論が分類されます。

「重要なのは、「オペレーショナル エクセレンス ハウス」とも呼ばれる優れたフレームワークです。このフレームワークには、シックス シグマ、リーン、カイゼンなどの主要な手法が含まれており、これらを組み合わせることで構造が完成します。個々のピースがなければ、完成したハウスは作れません。」とピーターカ氏は言います。

組織はこれらのモデルを、まったく新しい事業への取り組み、既存の事業の修正、部門横断的な業務管理における特定のギャップの解消などのために、さまざまな方法で使用できます。

以下では、よく知られているオペレーショナル エクセレンス モデルを紹介します。

  1. ボルドリッジ エクセレンス フレームワーク (Baldrige Excellence Framework): このフレームワークは、組織のパフォーマンス エクセレンスのための基準、コンセプト、スコアリング ガイドラインを提供します。米国の実業家で、商務長官も務めた故マルコム・ボルドリッジ (Malcolm Baldridge) 氏にちなんで名付けられたこのモデルは、企業が改善プロセスを評価し、どこに重点的に取り組むべきかを特定するのに役立ちます。

    またこの基準は、米国組織の競争力を高める取り組みの一環として、パフォーマンスに優れた企業や非営利団体を表彰する、マルコム・ボルドリッジ国家品質賞の受賞者を選出するためにも使用されています。ボルドリッジ モデルのコア コンセプトは次のとおりです。 
  • 先見性の高いリーダーシップ
  • 顧客主導のエクセレンス
  • 組織的および個人的な学習
  • 従業員とパートナーの重視
  • アジリティ
  • 未来に焦点を当てる
  • イノベーションのための管理
  • 事実に基づく管理
  • 社会的責任
  • 結果と価値の創出を重視
  • システムの視点

    ボルドリッジ フレームワークは、世界中の 70 以上の国家的なビジネス エクセレンス プログラムの基礎を形成しています。カナダにも Excellence Canada (エクセレンス カナダ) と呼ばれる同様のイニシアチブが存在し、Canada Awards for Excellence (カナダ エクセレンス賞) を授与しているほか、企業の改善モデルとして Canadian Framework for Business Excellence (カナダのビジネス エクセレンス用フレームワーク) を構築しています。この原則には以下が含まれます。
     
  • 関与を通じたリーダーシップ
  • 利害関係者/顧客と市場の重視
  • 協力とチームワーク
  • 予防型プロセス管理
  • 意思決定に対する事実に基づくアプローチ
  • 継続的な学習と人々の関与
  • 継続的改善と画期的思考の重視
  • すべての関係者と社会に対する義務の履行
  1. European Foundation for Quality Management (欧州品質管理財団): 欧州で最も有名なオペレーショナル エクセレンス フレームワークは、European Foundation for Quality Management によって作成された EFQM モデルです。この取り組みは、欧州の主要な 14 人の CEO により 1988 年に開始され、企業の現状を評価し、ギャップを明らかにし、解決策を特定することで、企業の競争力向上を支援することを目的としています。

    EFQM モデルのアップデートは 2020 年に予定されていますが、ここでは 2013 年版で確認したコア バリューを紹介します。

  • 顧客への付加価値の提供
  • 持続可能な未来の創造
  • 組織能力の開発
  • 創造性とイノベーションの活用
  • ビジョン、インスピレーション、誠実さによる統率
  • 俊敏な管理
  • 人材を活かした成功
  • 優れた成果の持続

    ボルドリッジ モデルと同様に、EFQM モデルも他国の取り組みにインスピレーションを与えてきました。これら 2 つのモデルの要素を組み合わせたモデルも存在します。こうしたハイブリッド モデルは、シンガポールなどで使用されています。 
  1. 総合的品質管理 (TQM): これは、すべてのスタッフを継続的な改善に引き込む、オペレーショナル エクセレンスのための管理システムです。このフレームワークは、1970 年代に日本の優れた品質の前に苦戦する欧米企業のために生まれたものです。

    このモデルはその後、品質改善プロセスや高度な統計品質管理の先駆者である W ・エドワード・デミング (W.Edwards Deming) の研究と密接に関連付けられるようになりました。同氏のアイデアは、第二次世界大戦後の日本の経済発展に大きく貢献しました。

    日本科学技術連盟は 1951 年にデミング氏に敬意を表してデミング賞を創設しました。この賞は TQM に秀でた組織に毎年授与されています。当初、受賞者はすべて日本企業でしたが、1989 年に Florida Power & Light (フロリダ パワー & ライト) が初めて日本企業以外の受賞者となりました。その後、インドやインドネシアなど、アジア各国の企業もこのモデルを採用し、デミング賞を獲得しています。

    American Society for Quality (米国品質協会) は、TQM の原則を要約して、TQM は「顧客満足度を通じて長期的な成功を収めるための管理アプローチです。TQM は、組織のすべてのメンバーが、プロセス、製品、サービス、そして職場の文化の改善に参加することを基本とします。」と述べています。

オペレーショナル エクセレンス実施計画: フェーズ別

独自のオペレーショナル エクセレンス プログラムを開始する準備が整ったら、成功に向けて組織をセットアップする方法を考える必要があります。プログラムには、プログラムの準備に始まり、成果の集約で終わる、8 つの主要なフェーズがあります。 

「一般的なオペレーショナル エクセレンスの取り組みは評価から始まります。この評価フェーズでは、達成しようとすることを主要な関係者とともに決定し、目標の階層構造を構築します。」とブロフキン (Brovkin) 氏は説明します。

「この取り組みの最上位にあるのが、会社の目的 (ミッション) の確立です。高尚に聞こえるかもしれませんが、組織の目的を明確化することは、オペレーショナル エクセレンス プロジェクトの目標です。もちろんその後に、会社の目的に組み込まれ、進捗状況や最終的な成功の指標となる、下位レベルの目標についても合意します。」と同氏は言います。 

取り組みを実施するための主なフェーズは次のとおりです。

  1. チーム メンバーを選び、ビジョンとミッションを説明することで、イニシアチブの準備をします。
  2. 現在の状態を分析し、バリュー ストリームを文書化します。
  3. 改善の可能性が最も高い領域を特定します。
  4. 戦略と戦術を決定します。
  5. 具体的な改善目標を設定します。
  6. プロジェクトを実行します。
  7. 影響を評価します。
  8. 成果を集約し、ステップ 2 から再開します。 

このオペレーショナル エクセレンス実施計画テンプレートをダウンロードして、取り組みのフェーズを計画し、各フェーズの主要なマイルストーンを学びましょう。

オペレーショナル エクセレンス実施計画テンプレート (Excel) をダウンロード

Design for Operational Excellence: A Breakthrough Strategy for Business Growth』の著者であるダガン (Duggan) 氏は、企業はギャップ分析から始めるのではなく、最適なバリュー ストリームがどのようなものかを明確化し、そのビジョンの達成を目指すべきだと述べています。

専門家が推奨するベスト プラクティスの一部を以下に示します。 

  • 上級管理職のサポートがあり、オペレーショナル エクセレンスの取り組みに強力なスポンサー (チャンピオン) がいることを確認します。
  • 最初のプロジェクトには、迅速かつ顕著な結果を生み出せるものを選択して、取り組みに対する組織の支持を固め、財務上のメリットを示します。
  • そのため、理想的には、この分野の専門知識を持つオペレーショナル エクセレンス チームを編成して、展開を拡大します。このグループに、改善イニシアチブのポートフォリオを選択および管理させます。
  • 取り組みに貢献するスタッフを定期的に評価し、報酬を与えます。
  • 改善内容が組織のやり方に組み込まれていることを確認することも忘れてはなりません。次のプロジェクトに進む際も、現在のステップの監視と強化を続けてください。

オペレーショナル エクセレンスに関する役割と責任とは

オペレーショナル エクセレンスの改善を担当するチームの人数は、組織の規模によって異なります。いずれにせよ、このグループの少なくとも一部のメンバーは、このテーマに関する専門知識を持っていなければなりません。典型的な役割としては、改善イニシアチブの開発と実行を担当するオペレーショナル エクセレンス担当ディレクターが挙げられます。 

その他のメンバーには、リーン管理の促進や関連プロジェクトの実施経験を持つスタッフなどを含めます。目標は、オペレーショナル エクセレンスを会社の中核的な強みとすることです。

多くの場合、シックス シグマのような改善手法のトレーニングや認定を受けたスタッフが取り組みをリードし、マスター ブラック ベルトやブラック ベルトが含まれる場合もあります。 

オペレーショナル エクセレンス グループの責任は、プロセス改善イベントの監督、部門横断的なプロジェクト チームへの参加、パフォーマンス指標の定義と監視、文化の醸成、最前線のオペレーショナル エクセレンス リーダーのメンタリングなどの職務に及びます。

オペレーショナル エクセレンスのコア コンピテンシー

この分野の第一人者は、オペレーショナル エクセレンス スタッフに求められるコア コンピテンシーとして、戦略に沿ってパフォーマンスを向上させる能力、強力なリーダーシップとエンゲージメント スキル、文化的流暢さ、ビジョン、継続的改善に関する専門知識、プロセス変革の知識、リスク管理などを挙げています。

オペレーショナル エクセレンスの目標とは

これまで見てきたように、オペレーショナル エクセレンスは、パフォーマンスを改善するための非常に意図的な取り組みから生まれます。まず、オペレーショナル エクセレンス イニシアチブにより何を達成したいのかを明確にします。目標を設定することで、成功を測定するための基準が得られます。 

一般的に、オペレーショナル エクセレンスの目標は、財務、運用、文化、事業の 4 つの主要なカテゴリに分類できます。各カテゴリの具体例をいくつか見てみましょう。

  1. 財務関連のオペレーショナル エクセレンス目標の例: 

  • 売上の増加
  • 操業度  
  • コスト管理または削減 
  • キャッシュフローの強化
  • 資産の生産性向上
  • 資本効率の向上
  • 支払いサイクルの短縮
  • 未収金の減少
  • サプライチェーンの効率化
  1. 運用関連のオペレーショナル エクセレンス目標の例

  • 事故率または負傷による損失時間の減少
  • 欠陥やエラー率の改善
  • 規制やコンプライアンスに関する問題の減少
  • 顧客満足度の向上 
  • バリュー ストリームにおける無駄の削減
  • 環境負荷の減少
  • ダウンタイムの短縮
  • 顧客維持率の向上 
  • 生産高または生産性の向上
  1. 文化関連のオペレーショナル エクセレンス目標の例

  • トレーニングの強化と主要スキルを持つ従業員の増加
  • 従業員の業務意欲の向上
  • 個々のチーム メンバーによる説明責任の強化
  • 部門間協力の改善
  • 従業員満足度の向上
  1. 事業関連のオペレーショナル エクセレンス目標の例

  • 現在の状態と最適なパフォーマンスの間の対処可能なギャップの解消
  • そのギャップの財務価値の把握
  • 業界標準に照らしてオペレーショナル エクセレンスの成熟度に到達

オペレーショナル エクセレンスの指標とは

オペレーショナル エクセレンスを実現しようとする企業は、追跡可能な指標を使用して目標を明確にし、パフォーマンスを継続的かつ客観的に評価できるようにする必要があります。これらの指標により、品質、生産性、効率性などを測定します。

企業レベルでは、同時進行中の業務改善イニシアチブの数、それらのイニシアチブが成功した場合の推定価値、各イニシアチブとポートフォリオ全体の失敗リスクの割合、過去 12 か月間の運用改善から得られた価値などが指標に含まれます。

オペレーショナル エクセレンスの指標は、一般的に以下のカテゴリに分類されます。

  • 効率性
  • 有効性
  • キャパシティ
  • 生産性
  • 品質
  • 収益性
  • 競争力
  • 価値

オペレーショナル エクセレンスの KPI とは

主要業績評価指標 (KPI) は、オペレーショナル エクセレンス プログラムのパフォーマンスを示します。特に重要な指標のダッシュボードを作成すると、それらの指標を常に監視できます。 

Clarasys (クララシス) のプリンシパル コンサルタントであるトム・カーペンター (Tom Carpenter) 氏は、オペレーショナル エクセレンスの改善を評価する際に、「ほとんどの人は、処理時間 (開始から終了までの時間など)、例外 (標準的なプロセスから外れたケースの数など)、アウトプット、エラー率などを測定する傾向があります。」と言います。

「しかし、より重要なのは、従業員の満足度、顧客満足度 (プログラムが何らかの形で顧客に影響を与える場合)、顧客維持率、顧客満足度スコア、ネット プロモーター スコアなど、全体的な顧客エクスペリエンスへの影響です。」と同氏は説明します。 

カテゴリ別の KPI をいくつか次に示します。

  • 顧客満足度: ネット プロモーター スコア、全体的な満足度指標、苦情率、サービスレベル契約の達成率、コール ピックアップ時間、問題解決までの時間、電子商取引の放棄率、更新率と定着率
  • 品質: 手直し率、エラー/不良率、受注確度、品質不良コスト、不合格材料のコストまたは量、変更リクエスト数 
  • 生産性: 操業度、ダウンタイム、全体的な設備効率、稼働率、生産高、労働稼働率、営業利益率、期限内納品、従業員と売上の比率
  • 販売効率: 月間成約数、電話回数、販売量、勝敗率、SNS による接触数、顧客の生涯価値
  • 文化: 完了したトレーニング、従業員満足度スコア、従業員定着率、社内外の採用比率
  • 製造: 事故および負傷率、設備アラーム率、エネルギー消費量、自動制御されたプロセスの割合
  • 情報テクノロジー: アップタイム、アプリケーションのパフォーマンスと可用性、一括サービスレベル契約の達成率、プロジェクト コスト、エラー率、障害解決までの時間、プロジェクトの満足度 
  • 財務: 粗利率、キャッシュフロー (売掛債権回転日数 (DSO)、買掛債務回転日数 (DPO))、EBITDA、監査実績、資産価値とライフサイクル コスト予測、コンプライアンス リスク測定、災害復旧準備指標

オペレーショナル エクセレンスを実現した企業事例

オペレーショナル エクセレンス手法は、Ford (フォード)、Toyota (トヨタ)、Exxon (エクソン)、General Electric (ゼネラル・エレクトリック)、Motorola (モトローラ)、Bank of America (バンク・オブ・アメリカ)、Johnson & Johnson (ジョンソン・エンド・ジョンソン)、Amazon (アマゾン) など、多くの有名企業の業績向上に寄与してきました。

「オペレーショナル エクセレンスは新しい現象ではありません。」と Global Six Sigma (グローバル シックス シグマ) のピーターカ (Peterka) 氏は言います。「そのコンセプトと用語は 20 年近く前から存在しています。知られている最初の使用事例は、Allied Signal (アライド・シグナル)、現在の Honeywell (ハネウェル) においてです。」

Business Transformation & Operational Excellence Awards (ビジネス トランスフォーメーション & オペレーショナル エクセレンス賞) は、オペレーショナル エクセレンスの実現により、目覚ましい成果をあげた企業を表彰するものです。最近の主な受賞者は以下のとおりです。

  • Sanofi Pasteur (サノフィ パスツール): このワクチン メーカーは製造品質文化の弱さに悩まされていました。同社はオペレーショナル エクセレンスの原則を採用することで、2 年間で完全な経営再建を実現して、供給量を増加し、保健当局の信頼を回復し、2 億 5 千万ドル以上のコスト削減を達成しました。
  • Philips Lighting (フィリップス ライティング): この企業では、市場シェアと収益の減少、顧客満足度の低下、信頼性の低いサービス、競争力のない製品リードタイムなどの問題が発生していました。同社は、リーン方式やシックス シグマなど複数のツールを使用し、顧客の声に基づく改善を実施するために、オペレーショナル エクセレンス チームを立ち上げました。その結果、収益が 1 億 2,500 万ドル増加し、対象製品の売上が 20% 向上し、影響を受ける地域のネット プロモーター スコアがマイナス 56 からプラス 4 に上昇し、リードタイムとサービスの信頼性が大幅に改善されました。 
  • Black & Veatch (ブラック & ヴィーチ): カンザス州に本社を置くこの世界規模のエンジニアリング企業は、エネルギー事業を強化するためにエクセレンス プログラムを立ち上げました。この取り組みにより、電力や石油・ガスの分野における新規事業、従業員の定着、生産性の向上、コスト削減などの成果が得られました。
  • Mentis Neuro Health (メンティス ニューロ ヘルス) (現 Neuro Restorative (ニューロ リストラティヴ)): テキサス州に拠点を置くこの組織は、脳や脊髄に損傷を受けた人々にリハビリテーション ケアを提供していますが、病院から転院してくる外傷患者の受け入れに時間がかかりすぎていることが課題となっていました。この遅延は、競合する組織に収益を奪われることを意味します。オペレーショナル エクセレンスの推進を通じて、この組織はわずか 3 か月ほどで、3 週間かかっていた患者の受け入れを 2 日間に短縮できました。その結果、5 つの施設全体で患者数が 21% 増加しました。

製造業におけるオペレーショナル エクセレンスとは

オペレーショナル エクセレンスは、Toyota (トヨタ) や Ford (フォード) などの企業での成功もあり、製造業に特に大きな影響を与えています。製造業における変革は、多くの場合、大幅な無駄の削減と生産フローの平準化を目的とします。 

リーン方式は、製造業におけるオペレーショナル エクセレンスに対する一般的なアプローチであり、フローは重要なリーン コンセプトです。いわゆる「1 個流し (one-piece flow)」は、各ユニットをバッチではなく 1 個ずつ生産していくことを指します。この手法を採用し、工程を連結してバリュー ストリームの流れをよくすることで、効率が高まります。また先入れ先出しやカンバンの手法を取り入れることで、サプライ チェーンのフローも改善できます。

Institute for Operational Excellence (オペレーショナル エクセレンス協会) は、フローを視覚化することの重要性を強調しています。これは、生産のタイミングを目に見えるシグナルやインジケーターで提供することを意味します。機械が詰まったときに点灯する赤いランプや、原材料を補充するタイミングを知らせるカンバン カードは、バリュー ストリームの状態を即座に明らかにします。

その結果、中断や問題の見落としがなくなります。フロー内の従業員が問題を解決できるため、自己修正あるいは「自己修復」バリュー ストリームが形成されます。 

ニューハンプシャー州に拠点を置く工業用切断システムとソフトウェアのメーカーである Hypertherm (ハイパーサーム) 社は、製造業におけるオペレーショナル エクセレンスのケーススタディとして、ダガン (Duggan) 氏のお気に入りの事例の 1 つです。ダガン氏によると、同社は生産システムを最適化し、受注情報が製造部門に直接回されるようにしました。Hypertherm は、「混合モデル バリュー ストリーム」と呼ばれる原則を採用することで、(複数の製品タイプを製造している場合でも) こうした機能を実現しています。

生産管理部門を持たない非常にフラットな組織構造が、Hypertherm を極めて効率的にしている一因であると、ダガン氏は言います。同社はオフショアリングやレイオフを一切行うことなく、革新的な手法で新製品を投入できるようになりました。その結果、社会的責任、環境意識、優れた職場などの分野で賞を獲得しています。Hypertherm は非常に効率的であるため、中国やインドなどの低コストの国でも競争力があり、同社は生産高の 25% を輸出しています。 

「私たちは、上層部の介入を必要としない自律的な運用を実現するために、常に限界に挑戦しています。」と、Hypertherm の運用担当バイス プレジデント、ジム・ミラー (Jim Miller) 氏は述べています。 

アリゾナ州経済安全保障局の継続的改善室アシスタント ディレクターであるウォーレン・ストークス (Warren Stokes) 氏は、別のオペレーショナル エクセレンスのケース スタディを紹介しています。この事例では、ある航空宇宙電子機器メーカーが、製品ラインの変動コストを 18% 削減し、140 万ドルを節減することに成功しました。この企業は「各工程の品質向上、手直しやライン停止の排除、供給品の事前キッティングの改善、ポイントオブユース ツールの使用、作業の標準化に焦点を当てました。」と同氏は説明しています。

情報テクノロジーにおけるオペレーショナル エクセレンスとは

オペレーショナル エクセレンスを実現している情報テクノロジー組織は、プロセスと文化を継続的に改善することに重点を置いています。アジャイル手法やスクラム手法は本質的に、こうした IT 企業のオペレーショナル エクセレンスを補完するものです。 

これらの企業では、オペレーショナル エクセレンスのアプローチは、汎用性の高いスキルを持つ従業員を保持することにつながります。こうしたチーム メンバーは、深いが狭い技術的な専門知識だけでなく、より広い視野を持ち、変化するニーズに適応できます。このような人材を確保するには、スタッフと管理職の両方について、優れた採用プロセス、オンボーディング、トレーニングが欠かせません。

IT 業界における信頼性の高いスケジュール、継続的な統合、継続的なリリースを軸とする作業プロセスは、製造業におけるスムーズで安定したフローに相当します。IT 業界では、抜本的な統合、破壊的なリリース、技術的負債などが、バリュー ストリームを損なう要因となります。 

同様に、オペレーショナル エクセレンスを実現している IT 企業は品質に力を入れており、バグの修正、コードの見直し、問題の早期発見に関する強力なプロセスを持っています。

医療業界におけるオペレーショナル エクセレンスとは

オペレーショナル エクセレンスは医療業界を席巻していますが、政策立案者や医療従事者にとって、品質、価値、無駄が最重要の懸念事項であることを考えると、これは驚くべきことではありません。病院やその他の医療機関の取り組みでは、リソースをより効率的に使用するためのプロセスの改善、ミスや不要な手順の排除、治療成果の向上に重点が置かれています。 

他の業界におけるオペレーショナル エクセレンスのイニシアチブと同様に、医療機関でも、小さなプロセス改善が大きな成果をもたらす可能性があることが認識されつつあります。たとえば、ジョンズ・ホプキンス大学のプログラムでは、医師と看護師が集中治療室の患者に中心静脈カテーテルを留置する際に従うべき 5 ステップの安全チェックリストが作成されました。また、このプログラムは安全文化の促進にも役立ち、安全規則に従わない者がいた場合は、すべての介護スタッフが声を上げられる体制が構築されました。 

この取り組みにより、死亡者数が 10% 減少し、プログラム参加病院における血流感染症が事実上排除され、感染症の治療費用が数十億ドル削減されました。安全性チェックリストは、オペレーショナル エクセレンスの中心にあるプロセス標準化の典型的な例です。 

その他にも医療分野では、従来のトップダウン アプローチに代えて、最前線で問題を解決するためのさまざまな取り組みが行われています。トロントの SickKids Hospital (シックキッズ病院) では、オペレーショナル エクセレンス プログラムの一環として、部門レベルで問題を解決する権限を各部門に与えています。たとえばすべての部門が、品質と安全性の問題に対処するため、リーン A4 分析プロセスを使用して、15 分間の作戦会議 (ハドル) を開催しています。

マーケティングにおけるオペレーショナル エクセレンスとは

マーケティング チームのオペレーショナル エクセレンスでは、多くの場合、顧客とシステムの価値に重点が置かれます。顧客は、内部関係者の場合もあれば、外部関係者の場合もありますが、いずれにしても価値を決定するのは顧客です。 

「システム思考」とは、特にマーケティング部門と販売部門間のサイロ化を解消し、各マーケティング イニシアチブを単一のバリュー ストリームの一部と捉えることで、会社全体を視野に入れてマーケティング活動を管理することを意味します。 

マーケティングにおけるオペレーショナル エクセレンスのもう 1 つの側面は、データ主導型管理の導入です。マーケティング活動のパフォーマンスを追跡し、ベンチマークを確立し、効果を評価し、このパフォーマンスをビジネス成果に結び付けることで、マーケティング担当者はプロセスの改善点を特定できます。

銀行業界におけるオペレーショナル エクセレンスとは

オペレーショナル エクセレンスの取り組みとして、銀行などの金融サービス企業は、より効率的なプロセスの開発、組織の合理化、テクノロジーの最大限の活用、正確性と一貫性の向上などを推進してきました。

金融サービスにおけるオペレーショナル エクセレンスの特徴は、収益に対するコストの比率が低いこと、および常勤換算の従業員 1 人あたりの顧客数が多いことです。これらの指標は、それぞれコスト効率と生産性の高さを示します。 

銀行や類似企業におけるプロセス改善では、多くの商品において、電子データ キャプチャ、自動化された意思決定、不正行為の検出、いわゆるストレート スルー プロセッシングなどの自動化に重点が置かれています。これは口座開設時に、自動化されたシステムによって顧客情報がすべて入力され、同時にその情報がすべての業務部門と共有されることで、データを手動で再入力する必要がなくなることを意味します。たとえば、当座預金口座の顧客がクレジット カードを申請する場合、その顧客の情報はすでに金融機関のシステム内に存在しています。

その他のオペレーショナル エクセレンスの目標としては、ローンの申請から融資までの時間を短縮するなどのプロセスの効率化や、バック オフィス担当者に対する顧客対応担当者の比率を高めるための業務の合理化などが挙げられます。

人事部門におけるオペレーショナル エクセレンスとは

人事チームは、採用やオンボーディングなどのプロセスをより効率化し、ビジネスの他の部分とより緊密に連携し、管理部門ではなく成長の触媒として機能する方法を模索することで、オペレーショナル エクセレンスを追求しています。

ここでもコンピューター化が大きな役割を果たしており、多くの企業が自動化された採用ソリューションやセルフサービス型の人事ポータルを導入しています。 

またもう 1 つの大きな傾向として、従来の中央人材部門に代えて、さまざまな運用モデルが試行されています。これらのモデルの多くは、企業の競争力に対する人事部門の貢献度を高め、人事部門と他のビジネス部門を統合することを目的としています。たとえば、人材セグメント化モデルでは、人事チームのさまざまなメンバーが、コンピューター エンジニア、ミレニアル世代の従業員、新興市場のスタッフなど、会社のさまざまな主要な従業員属性に割り当てられます。これにより、人事部は会社にとって特に重要な人材の優先事項に集中できます。 

プロフェッショナル サービス モデルでは、人事部は社内のコンサルティング グループとして働き、各部門が求めるサービスを提供します。また JIT モデルでは、人事担当者は部門横断的なチームに配置され、必要に応じて人材関連のプロジェクトに関するアドバイスを行います。

ファンクショナル エクセレンスとは何か

オペレーショナル エクセレンスは、「ファンクショナル エクセレンス」と混同されることがあります。2 つの用語は非常によく似ていますが、ファンクショナル エクセレンスとは、財務や法務といった企業のサポート業務 (ファンクション) が優れたパフォーマンスを発揮して、ビジネスの成功を支えることを表します。 

これらの業務は組織の成功に不可欠です。ファンクショナル エクセレンスに対する具体的なニーズは、業界によって異なります。小売業では、マーケティングとセールスにおけるファンクショナル エクセレンスが最も重要です。一方製造業では、製品エンジニアリングがファンクショナル エクセレンスの中心となります。ほとんどの企業は、財務、人事、または調達の分野で、ファンクショナル エクセレンスを必要としています。

ファンクショナル エクセレンスが業務能力に焦点を当てているのに対して、オペレーショナル エクセレンスではプロセスが重視されます。またファンクショナル エクセレンスはスキルと専門知識に大きく依存しますが、オペレーショナル エクセレンスは反復可能なプロセスの最適化に重点が置かれています。 

さらに、この 2 つのコンセプトの間には緊張関係があります。オペレーショナル エクセレンスは部門間の分断を解消し、すべてのスタッフが自身を単一の組織とバリュー ストリームの一部と認識するよう促します。一方ファンクショナル エクセレンスは、サポート業務を個別のエンティティと見なし、これらのサポート的役割を担う人々は通常、収益を生み出したり、顧客に価値を提供したりすることに、自分が直接的な役割を持っているとは考えません。

オペレーショナル エクセレンス ツールとは

オペレーショナル エクセレンスを目指す際には、ビジネス プロセス管理アプリケーションなど、この取り組みをサポートするツールを使用してください。ソフトウェアは、顧客からのフィードバックの収集、継続的な改善プロジェクトの追跡、KPI の監視、結果の定量化などに役立ちます。 

今日のクラウドベースのソフトウェアを使用すると、あらゆる規模の組織が技術的負債を抱えることなく、費用対効果の高い方法で必要なリソースに簡単にアクセスできます。その利点には、モバイル インターフェイス、容易なコラボレーション、使いやすさ、他の一般的なエンタープライズ アプリケーションとの事前構築された統合などがあります。 

Smartsheet によるオペレーショナル エクセレンスとワークフローの改善

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