アジャイル プログラム管理の完全ガイド

By Kate Eby | 2022年4月30日

アジャイルの主要な専門家からのアドバイスをまとめてご紹介します。アジャイル プログラム管理での成果実現にお役立てください。

この記事では、アジャイル プログラムの構築方法アジャイル プログラム マネージャーの役割組織におけるアジャイル プログラム管理の導入方法などに役立つヒントを解説するほか、カスタマイズ可能なテンプレートを備えたアジャイル プログラム管理スターター キットをご提供します。

アジャイル プログラム管理とは

アジャイル プログラム管理とは、関連する複数のアジャイル プロジェクトを組織全体で調整することであり、アジャイル プログラム管理の目標は、全体的なビジネス目標を念頭に置き、アジャイルの概念を使用して個々のプロジェクトで最良の成果を上げることです。

プロジェクト管理とは対照的に、従来のプログラム管理では、個々のプロジェクトの成果物ではなく、多数の関連プロジェクトの進捗と成果に重点を置きます。中小企業のプログラム マネージャーは、会社全体のプロジェクトを監督する場合があり、大企業のプログラム マネージャーは、1 つの部門だけを指揮する場合があります。

アジャイル プログラム管理でも従来のプログラム管理でも、同様のプロジェクトに取り組むチームの調整が必要であり、発展と適応を目的とした最終製品の開発が進められます。ただし、アジャイル プログラム管理では、アジャイル プロセスに注目し、アジャイル チームの活動規模の拡大に努めます。 

「アジャイル プログラム管理と言えば、アジャイルの規模拡大や大規模なアジャイルを意味すると思い込んでいる人が少なくありません。」プロジェクト マネジメント エッセンシャル (Project Management Essentials) の主要創設者であるアラン・ザッカー (Alan Zucker) 氏は、そう語っています。アジャイルのベスト プラクティスを導入するプログラム マネージャーなら、複数のアジャイル プロジェクトを調整および統合し、プログラムの成果を確実に得ることができます。

アジャイル プログラム管理のガバナンス

組織では、まとまりのあるガバナンス構造を確立して、アジャイル プログラム管理の作業を調整する必要があります。この構造によって、プロジェクトでの連携、意思決定、成果を得るための基準および指標といった管理上の重要事項を決定します。

次に、アジャイル プログラム管理の効果的なガバナンスを確立するための推奨事項をご紹介します。

  • プログラムが組織の優先事項に沿っていることを確認する: プログラムは最初から組織の優先事項に沿ったものでなければなりません。作業を進めている間、チーム リーダーがプログラムを常に調整し、作業が組織の目標と一致しない領域に及ばないようにすることが重要です。
  • 従来のプログラム管理よりも緩い構造を許容する: アジャイル プロセスの機能は、従来のプロジェクト管理とは異なっています。アジャイル プロジェクトでは、プロセスよりも結果に注目するため、アジャイル プログラム マネージャーは、アジャイルの方法論に沿わない従来のプロジェクト管理戦術を使用しないようにする必要があります。
    Sarah Klarich
    「構造ではなく、重視する対象を変えたいと考えています。」ダラスを拠点とするデジタル製品開発コンサルタント会社、ダイアレクサ (Dialexa) の主任であるサラ・クラリッチ (Sarah Klarich) 氏は、そう語ります。「その対象とは進捗であり、チーム メンバーは、こう自問する必要があります。作業は進んでいるか。測定可能な結果を保持し、それを基に意思決定を行えるようにしているか。時間と予算の厳守から進歩と価値に重点を移さなければなりません。時間と予算を守れても、メンバーに必要なものや、組織にとって重要なものを提供することはできないからです。議論の対象をそのように変えていければ、ガバナンスの構築で、適切な意思決定や、その決定を適時に下すための情報の保持が重視されるようになります。」
  • 意思決定を下層でも行えるようにする: その作業を最もよく理解している担当者が重要な決定を下せるようにしなければなりません。上層のリーダーだけがプログラムに関する決定を下すことは避ける必要があります。

    「問題の捉え方を変えていく必要があります。」とクラリッチ (Klarich) 氏は言います。「決定はリーダーが下す必要がありますが、組織の最下層にもその責任を持たせたいのです。必ずしも、すべての決定を上層で行い、その後下層に伝達しなくてもよいと考えます。どのような事項であれば、チームやプログラム内のプロジェクト マネージャーが決定できるか、あるいは諮問委員会や運営委員会の判断を仰がなくても決定できるかを検討する必要があるでしょう。」
  • 複数のチーム間で調整する: アジャイル プログラム管理の目的で特に重要なのは、複数のアジャイル チーム間で作業を効果的に調整できるようにすることです。各チームは、他のチームが現在どのような作業を進めているかや、イテレーションをいつ完了させるかに加え、さまざまなチームのプロジェクト間にどのような依存関係があるかなどを把握する必要があります。

    「チームが複数あると、プロジェクトが 1 つしかない場合とは異なり、さまざまなレベルの調整がチーム間で生じます。」とクラリッチ (Klarich) 氏は言います。「そのため、こうしたバリュー ストリームの依存関係を計画および調整し、大きな関係者グループでそれをさらに調整するのは、一般的にやや困難です。この場合、複数の視点から優先順位を付け、規模上の要因を考慮してプロジェクト管理を強化する必要があります。」

    「どのアジャイル チームも、ほぼ同じ作業を進めています。」とザッカー (Zucker) 氏は言います。「それぞれが、製品バックログを持ち、独自の計画を立てているでしょう。しかし、10 を超えるチームを管理することになった場合、どうすれば、こうした複数のチーム間で作業を調整し、混乱を回避できるでしょうか。」

    同氏は、従来のプログラム管理を行う場合について、こう言います。「大規模な事前計画を立てます。全チームの作業を分析します。計画を実行します。その後、チーム メンバーがさまざまな時間に作業を完了し、最後に作業を統合します。」

アジャイル プログラム管理では、従来のプログラム管理と同じ調整を行いながら、アジャイルの機能の違いに適応する必要があります。「チーム間で同期を取り、優先順位を把握できるようにしなければなりません。」と同氏は指摘します。「たとえば、2 週間前だった、あるアジャイル チームの優先順位を次のイテレーションや次のスプリントに変更した場合、それらの変更をまだ調整中かどうかなどを確認します。2 週間のサイクルで開発している場合は、さらに緊密で多数の調整が求められます。」

  • イテレーションを短期化する: アジャイル プロジェクト管理では、作業を分割して 2 週間のインクリメントを設定します。したがって、このプロジェクト管理では従来のプログラム管理よりも短いイテレーションに作業を分割する必要があります。アジャイル チームは、四半期ごと、または 2 か月ごとに集合し、プログラムの進捗状況を調整および分析します。
    Yad Senapathy
    「漸増的であるとは、8 ~ 12 週間かけて、小さめ目のセグメントで作業を進めることを意味します。それを 15 ~ 16 週間に延長することもあるでしょう。」ダラスに拠点を置くプロジェクト管理トレーニング インスティテュート (Project Management Training Institute) の創設者兼 CEO を務めるヤド・セナパシー (Yad Senapathy) 氏は、そう語ります。「6 ~ 8 年をかける従来のプロジェクト管理とは対照的に、期間を短縮することで、複雑な環境でプログラムを立ち上げ、計画、実行できるため、顧客は大きな利益を得られます。」
  • パフォーマンスを監視および管理するためのメトリクスと KPI を選択する: アジャイル プロジェクト管理と同様に、プログラムの進捗状況を測定できるメトリクスと主要業績評価指標 (KPI) を決定する必要があります。重要な指標をいくつか選択し、継続的に監視します。対象のプログラムに最適な KPI と指標を選択するようにしましょう。

SAFe: アジャイル プログラム管理のための共通フレームワーク

アジャイル プロジェクトをアジャイル プログラム管理に拡大する一般的なフレームワークに、スケールド アジャイル フレームワーク (Scaled Agile Framework (SAFe)) があります。SAFe は、一連の組織構造を示すものであり、これによって、チームやプログラム マネージャーが複雑なプログラムやポートフォリオにアジャイルの概念を導入することができます。

SAFe プラクティスを使用すると、同様のプロジェクトに取り組んでいるさまざまなアジャイル チームを編成および調整できます。これにより、プログラム マネージャーは、プログラムの実行を可能な限り迅速化して、組織全体に利益をもたらす成果を得られます。

SAFe: アジャイル リリース トレイン

SAFe: アジャイル リリース トレイン SAFe の重要なコンポーネントの 1 つは、アジャイル リリース トレイン (ART) であり、これは、同様のプロジェクトや製品開発に取り組む複数のアジャイル チームの集合体を意味します。こうしたチームでは、依存関係の追跡や優先順位の調整を行い、すべてのプロジェクトを期限どおりに完了させます。

アジャイル リリース トレインは通常、約 75 ~ 150 人のメンバーで構成され、メンバーは個別の関連プロジェクトに取り組みます。「SAFe では、数十ものチーム作業を 1 つのプログラムで行えるように調整します。」とザッカー (Zucker) 氏は言います。 

複雑なプログラムであれば、SAFe とそのアジャイル リリース トレインが重要だと同氏は指摘します。「複数のチーム間で反復的かつ漸進的にデリバリを進める際に、その取り組みを調整するためのフレームワークや一連のプラクティスがなければ、従来のプログラムと同じ問題にぶつかることになります。SAFe ならそのフレームワークを作成できます。」

SAFe: チームの同期

SAFe を使用すると、早い段階で調整を行い、まとまったプログラム計画を作成できますが、継続的に成果を得るには、継続的な連携が求められます。そのため、約 8 ~ 12 週間ごとに集合して計画の認識合わせをし、プログラム全体が順調に進んでいることを確認します。 

「10 週間ごとに集まってこの 2 日間の計画イベントを行い、開発のイテレーションを行います。」とザッカー (Zucker) 氏は言います。「その後、イノベーションと計画 (IP) スプリントが続きます。プロセス改善やトレーニングを行いながら、次のプログラムのインクリメントに備えています。そして、このプロセスを最初からやり直し、反復をそのように維持することになります。」

同氏は、こうした共同作業ミーティングを開くことで、異なるプロジェクトやチーム間の相互依存関係を全メンバーが理解できるとも補足しています。

アジャイル プログラム管理オフィス

大規模な組織では、アジャイル プログラム管理オフィス (PMO) を設けて、組織的な作業に関する指針の提示やサービス提供を行うことがあります。このオフィスの目的は、チーム間のコミュニケーションを促進し、より大きなプログラム目標をチーム メンバーが理解できるようにすることです。

アジャイル プログラム管理オフィスが重視する点とは

アジャイル プログラム管理オフィスは、プログラム全体のニーズに沿ったプロジェクトの維持に必要なツールと情報をチーム メンバーに提供します。また、各プログラムの目的と、その目標達成を目指す際の具体的な進捗状況に重点を置きます。

プログラム管理オフィスは、バリュー マネジメント オフィスとも呼ばれることもあり、複数のチームやプロジェクトを調整する複雑な大規模組織で重要な要素として機能します。  

企業ごとに異なるものの、アジャイル プログラム管理オフィスには、次のように、いくつかの共通目標があります。

  • 全体像に注目することを奨励する: プログラム管理オフィスは、チーム メンバーが、プログラムを順調に進め、目的を達成することに集中できるように支援します。クラリッチ (Klarich) 氏は、こう自問することを提案しています。「頻繁に価値を提供できているか。それを効果的に行えているか。この取り組みの目的は何か。目標は達成できているか。それを数値化する方法はないか。その測定方法を把握しているか。」
  • ツールと基本的な支援を提供する: プログラム管理オフィスの目的は、プログラム内のチームを支援し、チームが目標を達成できるようにすることです。同氏は、プログラム管理オフィスから、プロジェクトとプログラム チームのメンバーに尋ねられる最も重要な質問として、「どのような支援が必要か」を挙げています。

    うまく機能しているアジャイル チームでさえ、組織的な問題や構造的な問題を抱えていることがあります。ザッカー (Zucker) 氏は、こうした場合、アジャイル プログラム管理オフィスが「インフラストラクチャ、ツール、テンプレート、プラクティス、コーチングを提供して組織の成果実現を後押しできる」と説明しています。
  • マイクロマネジメントと過剰な一般化を防ぐ: 他のプログラム管理オフィスと同様、アジャイル プログラム管理オフィスでも次の 2 点を避けるべきです。1 つ目は、プログラムのマイクロマネジメントであり、2 つ目は、汎用的なツールとテンプレートの提供です。プログラムにはそれぞれ違いがあり、カスタマイズした固有のツールとテンプレートが必要になることもあると、同氏は繰り返し語っています。

アジャイル プログラム マネージャーの役割とは

アジャイル プログラム マネージャーは、共同でプログラムに取り組む全アジャイル チームの調整を主導します。また、複数のプロジェクトやチーム間のスケジュールを調整し、さまざまなアジャイル プロジェクト内の依存関係を管理します。

SAFe フレームワークを使用するアジャイル プログラム マネージャーは、アジャイル リリース トレイン エンジニアと呼ばれます。

次に、アジャイル プログラム マネージャーの主な任務をいくつか紹介します。

  • チーム間の調整: プログラム内の全チーム間の調整を担当します。「複数のプロジェクト間で調整を行い、スケジュール調整、依存関係管理、リスク管理を完了できるようにします。」とクラリッチ (Klarich) 氏は語っています。
  • 適切なコミュニケーションの監視と維持: アジャイル プログラム管理では、十分なコミュニケーションが不可欠です。かなりの数のアジャイル チームが各種プロジェクトに取り組んでいるため、依存関係の追跡と透明性の確保が最も重要です。同氏はこう説明します。優れたアジャイル プログラム マネージャーなら、「コミュニケーションのさまざまな面を理解し、情報が上層と下層の間で適時にやり取りされるように管理できます。」
  • 障壁の排除: アジャイル プログラム マネージャーの重要な義務の 1 つは、さまざまなプロジェクトが進む中でプログラムに生じる障壁を監視することです。

    「プログラム チームで発生した障壁を自力で解決できない場合、プログラム マネージャーの私には、チームがそれを排除できるようにする責任があります。」とクラリッチ (Klarich) 氏は言います。プログラム マネージャーは、プログラム全体に影響を及ぼす障壁を分析し、その体系上の問題を解決する恒久対策を見つける必要もあります。

    「現在、4 つのプロジェクトのうち 2 つに見られた体系上の障壁を追跡しています。」と同氏は言います。「3 つ目または 4 つ目のプロジェクトが同じ問題にぶつかる前にどうすればそれを解決できるのだろうと考えて、そうした障壁をプロアクティブに排除するためのパターンや傾向を探しています。」

    従来のプログラム管理を解説するこの包括的なガイドでは、プログラム マネージャーの役割を詳しく学ぶことができます。

アジャイル プログラム管理におけるその他の役割

プログラム マネージャー以外にも、アジャイル プログラム管理に関わる重要な役割は数多くあります。プログラムの種類によっては、価値の創出やソフトウェア開発といった分野の専門知識を持つメンバーが必要になる場合もあります。

アジャイル プログラム管理におけるその他の一般的な役割を次に示します。

チーフ アーキテクチャ オーナー

一般的にソフトウェア開発プログラム チームのメンバーです。ソフトウェア アーキテクチャ全体を把握しており、会社が新しいソフトウェアの開発に取り組む際に、非常に技術的かつ専門的な問題や質問に対処します。

プロダクト マネージャー

製品を開発するプログラム チームに重点を置きます。プログラム マネージャーと緊密に連携し、企業やプログラムのリーダーが開発する製品と開発期間を決定できるように支援します。また、実行可能な製品開発計画を設計します。

ビジネス オーナー

企業のリーダー、または、プログラムによる価値提供に責任を負う企業のリーダーおよび関係者で構成される小グループの場合があり、プログラムの目標と成果が組織の戦略的目標に沿っていることを確認します。

SAFe TeamRoles

アジャイル プログラム管理を導入するには

アジャイル プログラム管理の効果的な導入に必要な 6 つの基本ステップをご紹介します。これらは、最初の情報収集からチーム トレーニング、反復的な調整までさまざまですが、このステップによって、明確なプログラム目標を策定し、継続的な成果につながる構造を確立できます。 

アジャイル プログラム管理を導入するための 6 つのステップは次のとおりです。

  1. フィードバックの収集: 現在のプログラムは、製品開発や、会社で生じている特定の問題の解決に関係があるかもしれません。いずれにせよ、プログラム リーダーは、問題を把握しているメンバーとじっくり会話しないうちから、答えや解決策があると仮定すべきではありません。情報を基に目標、目的、問題を十分に把握して初めて効果的なプログラムの導入に着手できます。

    「提案内容を決定するには、背景を聞き取り理解することが重要です。」とクラリッチ (Klarich) 氏は言います。「私たちは『答えはわかっている』と思い込むことが少なくないようです。しかし、問題は何かすら把握できていません。解決すべき最も重要なプロセスの問題とは何かを明らかにする必要があります。」
  2. 適切な構造の確立: プログラムの問題と目標を把握したら、広範な管理構造を確立する必要があります。このためには、SAFe のようなフレームワークを使用する場合もあれば、現状に最適な別の構造を確立する場合もあります。
     
  3. チームのトレーニング: 管理構造を確立したら、チームをトレーニングしてその構造の機能を理解してもらい、こちらの全体的な要望に同意してもらうことが重要です。

    「メンバーをトレーニングして、フレームワーク、その導入方法、実践方法を全員が理解できるようにしましょう。」とザッカー (Zucker) 氏は言います。「私は漸増的に取り組むことに非常に意義を感じているので、必要に応じて構造を追加し、それらを強化しています。常にこう自問しましょう。『どうすれば改善できるか』」
  4. キックオフ ミーティングを計画する: どのようなプログラムでも、すべてのチーム メンバー、会社のリーダー、関係者が参加するキックオフ ミーティングが不可欠です。このミーティングでは、プログラム マネージャーがチーム メンバーや関係者と共同で、プログラムの対処すべき基本的な問題、提示された解決策、目標達成の方法などを決定します。

    関係者全員が「同調し新たな視点を生み出すことに力を注ぐ」必要があるとクラリッチ (Klarich) は言います。
     
  5. 共通言語の確立と使用: 共通言語の理解と使用は、企業のプログラムを支援する外部コンサルタントにとって特に重要です。しかし、内部のプログラム リーダーと従業員を考慮すると、共通言語の開発も軽視してはなりません。こうしたメンバーは異なる経験を持ち、プログラム上、異なる言語を使用している可能性があるからです。

    外部のコンサルタントは次のような態度でプログラムを開始すべきではないとクラリッチ (Klarich) 氏は言います。「まったく新しいこのアジャイルの語彙を学んでいただければ、お話しできます。」そうではなく、プログラム内では有意義な方法でメンバーの声に耳を傾け、メンバーの言葉を使う必要があると同氏は考えています。「『支援が必要と聞きました。手助けしたいのです。すぐに話し合いましょう』と声をかけて一歩ずつ進むようにすれば、メンバーの心を開くことができます。」同氏はそうアドバイスします。
     
  6. 作業のイテレーションの調整: プログラム リーダーは、アジャイル チームがさまざまなプロジェクトを進めている中で、すべての作業を継続的に調整しなければなりません。それを行うには、キックオフ ミーティングの後、各チームのスプリントまたはインクリメントの作業を継続的に監視するようにします。また、チームで集まり作業について話し、デモを行えるようにチェックインとミーティングを継続的に開きます。こうしたデモでは、個々のプロジェクトの進捗状況だけでなく、すべての作業の進捗状況や、それらをどう組み合わせて新たなソリューションや製品を生み出すかを示します。

アジャイル プログラム管理テンプレート スターター キット

このスターター キットを使用すると、チーム内で、アジャイル プログラム管理のベスト プラクティスを導入できます。このキットは、プログラム ガバナンス テンプレート、スケールド アジャイル フレームワーク (SAFe) ロードマップ テンプレート、アジャイル製品バックログ テンプレート、アジャイル成熟度スコアカードで構成されます。

 アジャイル プログラム管理スターター キット

アジャイル プログラム管理スターター キットをダウンロード

プログラム ガバナンス計画テンプレート

プログラム ガバナンス プラン テンプレート

プログラム ガバナンス計画テンプレートをダウンロード - Microsoft Excel

このテンプレートを使用すると、ガバナンス委員会のプレゼンテーションを計画し、プログラムでの意思決定のガイドラインをまとめることができます。また、プログラムのパフォーマンス レビューを作成することも可能です。

アジャイル製品バックログ テンプレート

アジャイル製品バックログ テンプレート

アジャイル製品バックログ テンプレートをダウンロード
Microsoft Excel

アジャイル製品バックログを使用すると、関係者などが製品に含めたいすべての機能に加え、製品を完成させるためにチームで引き続き取り組む必要のタスクを追跡できます。このテンプレートにはドロップダウン列があり、これによって、プログラム マネージャーが各タスクにステータスを割り当てることができます。

アジャイル成熟度スコアカード テンプレート

アジャイル成熟度スコアカード テンプレート

アジャイル成熟度スコアカード テンプレートをダウンロード
Microsoft Excel

このテンプレートを使用すると、開発ライフサイクル全体を通してアジャイル プラクティスの導入をランク付けできます。また、チームの活動力、環境、製品、アジャイル プロセスの仕組みに加え、アジャイル開発プラクティスの開始、定義、測定、アジャイル最適化を評価できます。

プログラム管理の際に役立つさまざまなテンプレートをご用意しています。こちらの一覧からダウンロードしてカスタマイズいただけます。

アジャイル プログラム管理のベスト プラクティス

アジャイル プログラム管理の成果を最適化するために専門家が推奨しているのは、一般的な一連のベスト プラクティスに従うことです。こうしたプラクティスを導入すると、全員参加のキックオフ ミーティングの開催からアクセス可能な製品バックログの作成に至るさまざまな場面で、効果的な計画立案、チーム調整、情報に基づく意思決定を行えます。

アジャイル プログラム マネージャーとして心に留めておくべきベスト プラクティスをいくつかご紹介します。

  • 全員参加のキックオフ ミーティングを実施する: プログラム リーダーであれば、特定の会社のリーダーや関係者をキックオフ ミーティングの参加対象者から外したくなることもあるでしょう。こうした関係者は、最新の進捗状況を知らされたり、他のミーティングに招かれたりすることがあるからです。しかし専門家は、キックオフ ミーティングについてそうした考えを持つのは間違っていると指摘します。

    クラリッチ (Klarich) 氏は、こう自問することをプログラム リーダーに提案します。「10 人と話すのに 2 週間かけるのではなく、全員が参加する 1 時間の会議を開くことはできないか。」さらにこう続けます。「プログラムの開始とは、全員が参加できるようにすると同時に、全体的な調整と認識合わせに力を注ぐことを意味します。」

    同氏はこう指摘します。全員参加でないキックオフ ミーティングには、「意思決定者や、情報を持つメンバーがいない可能性があります。それでかえってプロジェクトが進まなくなってしまうのです。」
  • すべてのチームと緊密に調整する: アジャイル プログラムを成功させる唯一の方法は、チーム間でコミュニケーションと調整を継続することです。プログラムの多く、とりわけ製品関連のプログラムでは、専門家が考える 5 層のアジャイル プランニングによって調整を行うことになるでしょう。

    5 層のアジャイル プランニングは以下のとおりです。
    • 製品ビジョン: 製品ビジョンまたは製品ビジョン ステートメントは、製品の全体的な本質、解決する問題、その理由を示します。
    • 製品ロードマップ: チームで製品を開発する方法の大まかな概要です。
    • リリース計画: 企業が製品の構成要素またはバージョンの一般公開を予定している時期を意味します。
    • イテレーション計画: 特定のチームがイテレーションまたはスプリント内で必要な作業をどのように計画しているかを示します。
    • デイリー コミットメント: アジャイル チームが進捗状況と問題について話し合う日次のミーティングを意味します。

      「複数の項目を一度にリリースするプログラムを検討する際には」次のように自問すべきと、クラリッチ (Klarich) 氏は言います。「『一度にリリースできる程度に調整しているか』、『どのようなロードマップか』、『この 3 か月のチャンクと翌 3 か月のチャンクで作業はどう変わるのか』」
  • 必要に応じて変更する: 継続的な計画とは、チームで問題をすぐに認識し、必要に応じて方向性を調整できることを意味します。

    「継続的な計画プロセスは、その他の項目以上に重要です。」とクラリッチ (Klarich) 氏は言います。「継続的に検討と適応を行った後にこう自問しましょう。『価値を得られているか。何らかの転換が必要か。追跡中にマークや測定を行える方法はあるか。想定どおりの価値を得ているか。どう変更すれば価値が高まるか。何かに転換すべきか、それとも止めるべきか』。プログラム管理における追跡や認識合わせでは、これらの問題がますます顕著になるため、さまざまな考え方を検討し、こうした意思決定を価値あるものにしてください。」
  • 組織固有の状況を考慮する: ある組織で機能している構造、計画、考え方は、別の組織では機能しないものです。プログラムを進める際には、組織の規模、業界、リーダーの見識といった組織固有の背景を考慮しましょう。

    クラリッチ (Klarich) 氏はこう言います。「少し違う方法で進めたいと思うかもしれません。しかし考えてみましょう。現在どのような組織固有の背景や、制約がありますか。それらによってどの程度リスクを回避できていますか。それらにはどのようなコンプライアンス要件が設定されていますか。」

    こうした現実のいくつかがアジャイル プロセスの妨げになることもあると同氏は言います。そのような場合、同氏は、完全にアジャイルではなくアジャイルの重要な要素で構成したプログラムを開発することがあります。

    「『それではアジャイルなプログラム管理ではない』と言われたら『そのとおりです』と答えるしかないでしょう。」と同氏は言います。「しかし、私たちは、そうした手順を踏み、組織固有の状況を考慮しながらプログラムを進めます。それを忘れてはなりません。すべての組織に当てはまる考え方などなく、ほとんどの組織に当てはまるものすらありません。プログラムを進めるために、そうした組織固有の状況を考慮する必要があるのです。」
  • 重要な決定を下層に任せる: 重要な決定を下すのは、課題や問題を最もよく把握しているメンバーでなければなりません。アジャイル プログラム マネージャーは、組織やプログラムの主要なリーダーではないメンバーがプログラム推進につながる意思決定を行えるように励ましサポートする必要があります。

    「その本質とは、従来のプログラム方法論にありがちな、指揮統制の強い考え方を変えることです。」とクラリッチ (Klarich) 氏は説明します。「私は、組織内の最下層で意思決定を行えるようにすることに全力を注いでいます。可能なときにはチーム全体が関与できるようにもするつもりです。現場のメンバーを引き込むことができれば、進んでコミットしてくれるようになります。何かを与えるのではなく、一緒に取り組むことで、成果を得られるのです。」
  • アクセス可能なプログラム バックログを作成する: アジャイル プログラム管理でのプログラム バックログとは、プログラム目標の達成または製品開発のために今後完了すべき全作業のリストを指します。プログラムのバックログは、特に製品開発でよく使用されます。

    専門家によると、プログラムのバックログに簡単にアクセスできるようにし、すべてのプログラム関係者のために透明性を確保することが特に重要です。ザッカー (Zucker) 氏はこう言います。「今後の予定を全員が把握できるようにするには、プログラム レベルでどのような対策を講じますか。そのようにして透明性を高めれば、チームの目標や必要な作業が明確になります。」
  • 顧客価値を重視する: アジャイル プログラム管理のリーダーに必要なのは、顧客が製品やサービスに何を求めているかに常に着目し、それを可能な限り迅速かつ効率的に提供できるようにプログラムを機能させることです。
  • 変化を受け入れる: 従来のプログラム リーダーの多くが、変化の可能性を恐れており、変化によってプログラムに遅れが生じたり、衝突が起こったりすると考えています。全体的なアジャイルの概念では、変化を避けず受け入れます。そのため、アジャイル プログラム マネージャーもそれらを実践する必要があります。

アジャイル プログラム管理の利点

アジャイル プログラム管理の戦略を取り入れると、組織やプログラムでいくつかの利点を享受できます。アジャイル プロセスに従うことで、適切な製品を短期間で市場に投入し、製品への顧客の反応を迅速かつ正確に把握できます。

アジャイル プログラム管理の手法を導入すると、一般的に次のような利点を得られます。

  • ビジネス成果が向上する: アジャイル プログラム管理プロセスにより、機能しない製品や市場が求めていない製品に巨額を投資しなくても済むためリスクを軽減できます。リスクが少なければ、利益が増え、全体的により良い成果を得られます。
  • 優れた製品を短期間で市場に投入できる: アジャイル プログラム管理なら、従来のプログラム管理よりもはるかに早く優れた製品を市場に投入できます。アジャイル プロセスでは、製品の初期バージョンを展開して、顧客の反応とフィードバックを得ることが奨励されます。これにより、アジャイル プログラム チームでは、微調整して改良した製品を市場に投入できます。
  • 全体的な品質が向上する: アジャイル プロセスでの作業に備わる反復的な性質と、顧客からの継続的なフィードバック収集により、製品の品質が向上します。

    「メンバーの共同作業によって問題を早期に発見できるため、全体的な品質が向上します。」とクラリッチ (Klarich) 氏は言います。
  • 製品とサービスを市場の変化に迅速に適応させることができる: アジャイル プログラム管理プロセスでは、顧客からのフィードバックを継続的に収集することを奨励しています。顧客にフィードバックを求めることで、顧客が何を望んでいるかや、顧客のニーズや願望がどう変化する可能性があるかをいつでも正確に把握できます。

    クラリッチ (Klarich) 氏はこう言います。「情報を収集し、それらを適切な意思決定とインサイト獲得につなげているので、市場の変化に対応できます。」
  • 無駄を削減できる: このプロセスに従うと、高品質の製品をすぐに提供できるため、動作しない機能や顧客にとって付加価値のない機能に時間を浪費せずに済みます。

    ザッカー (Zucker) 氏はこう言います。「非常に高い価値の製品だけを提供するとともに、顧客から多くのフィードバックを頻繁に得ることになります。」

アジャイル プログラム管理の課題

アジャイル プログラム管理には多くの利点がありますが、この方法論には問題点もあります。たとえば、アジャイル プロセスにコミットできない、あるいは作業を適切に調整できない場合、アジャイル プログラム管理の手法はそれほど成果をもたらさない可能性があります。 

アジャイル プログラム管理の方法論を採用するプログラム マネージャーが直面しそうないくつかの課題について説明します。

  • 不適切な作業統合: アジャイル プログラム管理を機能させるには、アジャイル手法をプログラムの作業に継続的に組み込む必要があります。チームでは、他のチームが進めている作業を把握し、その作業をその後も統合および調整する必要があります。
  • コミットメントの欠如: 組織によっては、アジャイル プログラム管理を導入しようとしても、アジャイル プロセスへのコミットを組織全体では得られないことがあります。こうした場合には、アジャイルの使用が一部のチームに許可されても、従来のプログラム管理の手法でチームが管理されることがあります。

    クラリッチ (Klarich) 氏はこう言います。「そのような組織では、真のビジネス アジリティを実現できておらず、アジャイル プロジェクトにウォーターフォール型の管理が行われる傾向があります。」

    「アジャイルの考え方が取り入れられていません。」とザッカー (Zucker) 氏は言います。「そのため、アジャイルに取り組む時間のほとんどが無駄になります。文化的な問題や、組織的な問題の影響を受けるからです。」
  • 組織変更への尽力の欠如: プログラムにアジャイル手法を取り入れたい組織では、多くの場合、かなりの組織変更が必要となるため、組織全体での変更管理に力を注ぐことになります。しかし、そうした管理への尽力に躊躇して、中途半端な対策を取ったり必要な支援を拒否したりする組織リーダーが少なくありません。

    「階層的な組織が原因で、調整が行われず、メンバーの賛同も得られません。」とクラリッチ (Klarich) 氏は言います。「ある層のメンバーから『これをやれ』と指示を受けても、下層のメンバーは自分にとってそれが何を意味するのかを理解できません。変更を管理しなければそうなります。『この方法が良いらしいのでこれでいこう』と言われても、それで何が変わるのか、自分たちにとって何を意味するのかを理解できないのです。」
  • 非現実的な期待: アジャイル プログラム管理なら製品や組織のさまざまな問題をすぐに解決できると考える組織もあります。しかし、アジャイル プログラム管理の利点を理解するには、多くの時間と労力を投じる必要があります。

    クラリッチ (Klarich) 氏によると、組織によっては、アジャイル プログラム管理手法を導入すれば大きな問題をすぐに解決できるという考え方が見られます。同氏はその考え方をこう説明しています。「『このプログラムは 2 年遅れていますが、アジャイル手法に切り替えれば、これをあっという間に解決できます』と言われてもそれは無理です。2 年遅れは 2 年遅れであり、一晩でそれを修正することはできません。」

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